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アメリカのアクア社が開発した遺
伝子組み換え鮭が、今年カナダで
4.5トン販売された。これはタイセ
イヨウサケにキングサーモンとゲン
ゲという深海魚の成長ホルモン遺
伝子を組み込んだものだ。寒い時
期に成長ホルモンを分泌しない鮭
を、冬場も大きくするためだ。この
遺伝子組み換え操作で、通常3年で
大人になる鮭が1年半で急成長し、
体重は20倍の巨大魚になる。万が
一自然環境に出てしまうと大型で獰猛な性格のため、野生種
が絶滅する可能性がある。また、加工品になれば消費者に
は分からない。成長ホルモンが多いとインシュリン様成長因
子が増え、食べた人が癌になる可能性があるとアメリカの研
究者達の報告があり、食の安全が脅かされている。
日本の鮭の自給率は約20%で、輸入の大半はチリ産の養
殖。今後も価格が安い外国の養殖鮭に席巻されるなら、必
然的に遺伝子組み換え鮭が出回るだろ
う。国内における地産地消の漁業をど
う確立させていくのかを、真剣に考え
る時期にきているのではないだろうか。
遺伝子には、次の世代へと受け継いでいく、生命の設計
図としての役割がある。遺伝情報をゲノムと言い、ゲノム編
集とは目的とした遺伝子をピンポイントで切断する技術のこ
と。例えばラットの皮膚を作る遺伝子を壊し、代わりに人間
の皮膚の遺伝子を入れると、人間の皮膚を持ったラットが出
来上がる。医薬品や化粧品のメーカーは欲しくてたまらない。
このゲノム編集技術を用いて、中国では成長ホルモンを壊
し、ペット用に15キロ前後のマイクロブタを販売している。
その逆に、ミオスタチンという筋肉の成長を抑制する遺伝子
を壊し筋肉量を制御できなくして筋肉ムキムキの豚を開発し
たり、成長が早く肉の多いフグや角のない乳牛、卵アレルギー
を引き起こさない鶏など、様々な家畜や魚などを企業は活発
に開発している。また、作物の開発では、アメリカで除草剤
耐性ナタネの市場化やトランス脂肪酸を含まない大豆、日本
では収量の多いイネが開発され、5年計画で試験栽培されて
いる。このように、以前は遺伝子組み換え動物はラットしか
存在しなかったが、ゲノム編集技術が簡単に使えるようにな
り、様々な動植物に応用されるようになってきた。
・特定の遺伝子を壊すと、生物の大事な機能を殺
そ
いでしまう。
遺伝子一つひとつは単体として働いているのではなくて、遺伝
子同士が連絡を取り合いながら複雑なシステムとして働いて
いるからだ。
・ゲノム編集で狙った遺伝子以外を切断(オフターゲット作用)
する可能性が高い。DNA情報の文字数は何十億もあり、間違
いをなくすことは不可能で、生命体として大切な遺伝子の機能
を失う可能性がある。
・軍事技術への転用や次世代への影響の懸念、特許権争いで
開発が過熱化している等まだまだ問題はある。日本では食品
表示や検査方法の規制など、対策は決まっていない状況。
生物多様性条約に基いたカルタヘナ議定書では、生物多様
性に悪影響を及ぼす恐れのあるバイオテクノロジーによる
遺伝子組み換え生物の移送や取扱いの検討を行うこととし
ているが、その分野の産業が影響を受けるとして、最大の産
出国であるアメリカやカナダは批准していない。私たちの食
を取り巻く環境は一段と厳しさを増しているが、安全性の疑
義を正すためにも、これらゲノム操作食品を「食べない、売
らない、作らない」と働きかけていくことが求められている。
(取材/川瀬)
世界ではバイオ複合企業のモンサントやデュポンなど4大多国籍企業で大豆や麦、なたねなどの種
子市場を寡占し、ゲノム編集技術で「種」の遺伝情報を書き換えた、新たな食品を創り出そうとしてい
ます。生命の源泉である種の開発を巡る現状と問題点について、学習会を開催しました。
【主催:食の問題を考える会
※
11/13 札幌エルプラザ】
あまがさ けいすけ
遺伝子組み換え食品い
らない!キャンペーン
代表。著書多数。
※構成団体:生活クラブ生活協同組合北海道・NPO法人北海道ワーカーズ・
コレクティブ連絡協議会・市民ネットワーク北海道
講師:
ジャーナリスト
天笠 啓祐
さん