「生活クラブニュース」東京電力福島第一原子力発電所事故に関する見解

東京電力福島第一原子力発電所事故に関する見解 生活クラブ連合会

生活クラブ連合会緊急対策本部

福島第一原発事故は状況が改善されないまま、ついに水産物からの放射能検出にまで及んでいます。

こうした事態をふまえ生活クラブ連合会緊急対策本部では、連合理事会(3月23日)で決定した今回の問題に関わる

対応方針の明確化と補強する必要があると判断しました。

ただし、以下の見解は「緊急対策本部」の暫定的な対処方針です。

今後の連合理事会での討議・決定をもって生活クラブ連合会としての方針をより明確にしたうえで、改めて組織内外に

明らかにする予定です。
 また、状況の推移によっては基本的な方針をさらに策定することや、放射能に関する生活クラブの自主基準について、

組織内外の議論をふまえながら、中期的な対応策を策定する準備を始めます。
(全文は生活クラブ連合会のホームページに掲載しています http://www.seikatsuclub.coop/


【1】 福島原発事故に伴う暫定的運用方針
(1)なぜ「国の暫定基準」運用か
 生活クラブでは、残留農薬や放射能について国の10分の1を自主基準として、今日まで運用してきました。

この自主基準は食品放射能汚染の品目や生産地などが特定でき、通常の生活における放射能防護を想定して

作られたものです。
 しかし今回の福島原発事故は組合員や主要な消費材の生産を担う提携生産者が最も多く暮らす地域のなかで

起きたものであり、自主基準が前提とする社会状況が大きく異なっています。<注>
 この状況下で放射能自主基準の運用を徹底するならば、今後消費材の多くを供給できなくなる事態が想定されます。

またそうした消費材の生産者を結果として排除することにもつながり、今後、新たな事態に対応した自主基準を、

これまでのように組合員と共に創り上げていくパートナーを失うことにもなりかねません。

食料の確保自体が不安定になることも予測されるこれからの情勢をふまえれば、この"絆"を維持することは非常に

重要なことです。
 したがって、今回の福島第一原発事故に関する対応では、自主基準は運用せず、「国の暫定基準」に基づく運用方針の

採用をやむを得ない対応策とします。とはいえ、国の暫定基準値以下であるからよいとする態度ではなく、刻々と変化する

中で、その都度リスク回避のための努力に留意します。

そのためにも私たちができうる範囲での自主検査と、それに基づく運用(情報公開)を今回の事態における暫定的運用の

基本とします。
(2)消費材検査の方針
 生活クラブは自前での放射能測定機能が無いことから、「放射能汚染食品測定室」に依頼して独自の放射能検査を

実施します。測定できる放射性物質は「セシウム(137・134)」「ヨウ素」です。
現在の汚染状況が継続する限り、当面以下の体制で検査を継続します。
①当面の検査実施方針
【農産物】 葉物野菜について、行政や官公庁の検査結果が次々と公表されて、必要により出荷制限が課せられています。こうした状況を見ながら産地や品目を定めて検査します。
【水産物】 当面対象となる海域は福島県・茨城県・千葉県太平洋沖の近海産の水産物とします。現在は取扱いがありません。この海域産の冷凍魚で現在供給されているものは原発事故前に漁獲されたもので、今後半年程度の在庫があります。今後漁獲されて取組む場合は、供給前に検査します。
【牛乳】 関連会社・新生酪農㈱(栃木・千葉工場)が製造する牛乳は供給責任を負う消費材です。集乳日ごとに毎日「原乳」を検査します。横内新生ミルク㈱(長野県)製造分は3/23集乳検体が不検出だったことから当面は日次検査の対象としません。
【畜産物】 最近の状況では畜産物も出荷規制の対象となる可能性が見えてきました。
《鶏卵》鹿川グリーンファーム、旭愛農生産組合の検体を毎週検査します。
《豚肉・牛肉》栃木県産の検体を2週サイクルを目途に検査します。
(牛乳と畜産物につきましては、北海道単協は該当しません)
②結果の公表と供給判断
 検査の結果として問題が生じた場合は、できるだけ速やかに組合員に向けて情報公開をします。ただし、出荷前の供給品から検体を抜き取って測定するため、検査結果の公表が組合員への配達時点に間に合わないこともあります。あらかじめご了承ください。

【2】 行政機関への要望・意見
 生活クラブ連合会は3月24日、菅総理大臣に対して「放射能汚染された食品に関する的確な情報を開示し、生産者・事業者の損失を補償すること」の要望を提出しています。
 今回の「福島第一原発事故に関する見解」を表明するに当たり、改めて次の各項目について国と地方自治体に要望します。
①第一次産品(農産物、畜産物、水産物)の放射能汚染検査に関して、そのモニタリング体制を拡充(検査ポイントの細分化・品目の拡充・検査頻度の向上等)すること。
②その情報公開の徹底と、判りやすさと迅速さに十分に配慮した仕組みを再構築すること。
③国の定める暫定基準値を緩和せず、むしろ国民が納得できる基準の設定に努めること。
④一次産品生産者の、出荷停止並びに風評被害、あるいは自主的検査による出荷自粛等に対する、迅速かつ生産者の立場に十分に配慮した被害補償を徹底すること。

【3】 組合員の皆さんへの問題提起と呼びかけ
 今回の事態に対する対応方針と暫定運用については上記のとおりですが、以下、組合員の皆さんにも考えていただきたいこと、そして今後の生活クラブの運動課題を提起します。
(1)組合員一人ひとりが自ら冷静に判断する主体になってください
 今回の原発事故は当初想定されていたよりも炉心格納施設の冷却に手間取り、その過程で「低レベル放射能汚染水」が海に放水されるなど、事態の長期化・深刻化は明らかになってきました。政府当局が公式に発表する情報の乏しさや、そのために生まれる様々な憶測は、情報を受け止める側にとって混乱の原因となります。
 たしかに健康への影響をめぐって放射性物質には「安全」と呼べるレベルはありません。しかし今は各人が冷静に対処することが必要です。生活クラブ連合会としても、組合員の生活と共同購入の継続のために、検査結果の情報を含めて可能な限りの判断材料を提供していきます。
(2)なによりも被災地の復興に組織を挙げて全力で努力しましょう
 生活クラブ連合会ホームページには、生活クラブふくしまの組合員や三陸海岸の提携生産者へのお見舞いや励ましの声が連日届けられています。現地の復旧・復興は長期的なものとなり、おそらくは相当の困難を伴うものとなるでしょう。私たちは共同購入を通して支援し、あらためて密接かつ信頼できる提携関係を築くことを第一義の課題とします。そのためのさまざまな提案を組合員の皆さんに今後とも問題提起させていただくと同時に、皆さんからの提案も大いに歓迎いたします。
 長期的な課題とはいえ、私たちに何ができるか、何をすべきかについて早急に取りまとめることが必要です。「国産」と「自給」を追求する協同組合の本来の役割を決して見失うことなく行動していきます。この地域の復興なくして、日本の第一次産業の未来はありません。
(3)脱原発に向けた運動を強めましょう
 生活クラブ連合会「第5次連合事業中期計画」(2010年)では、「脱原発」の姿勢を明確にしました。原子力政策の根本的見直しは必至であり、そのことに対する組織的な見解の整理も今後の重要な課題になります。
 また今回の原発事故と今後のことを考えるうえで十分に認識すべきは、福島県民は事故を起こした原発が供給する電力を使っているわけではなく、その電力はすべて首都圏に供給されていた事実です。このことをふまえずして今回の事態の正確な理解はなく、私たちにも反省が求められる重要な課題です。
 事故の対処経過を受け止める冷静な判断とは別に、これからの社会と生活のありかたについて考え、大いに議論していきましょう。
以上

<注> 生活クラブの放射能(セシウム)についての自主基準値(37ベクレル)制定の経過
 チェルノブイリ原発事故(1986年)のとき、生活クラブは自主基準値1㎏/37ベクレル(国の輸入食品の暫定基準値の10分の1)を超えた「パスタ類」と「わたらい茶」の供給を止めました。パスタ類は輸入品だったので、国産パスタの生産者と提携していくことになりました。わたらい茶の供給停止は、組合員も生産者も議論に議論を重ねた上での決断でした。全くの被害者である生産者の痛みを組合員がしっかりと受け止めて、翌年度のわたらい茶の共同購入を盛り上げていきました。
 当時の対応は事故原発(旧ソ連ウクライナ)が8000㎞と離れていたために、原料産地や対象品目を限定することのできる、通常の暮らしのなかでの放射性防護を念頭においたものでした。
 今回、私たちは原発事故現場の「圏内」ともいえる範囲に暮らしており、当然対応の前提が異なります。
 
 


生活クラブ北海道より
 
 今回の東日本大震災により被害に遭われた多くの方たちに、心よりお見舞い申し上げます。

 北海道単協の提携生産者における、今回の震災の影響について報告いたします。
1. 南かやべ漁業協同組合直販加工センター(昆布類)では津波による漁業被害がなく、今後の供給への影響はほとんど

  ありませんでした。ただし、加工地が東北にある「昆布削り節」が一時欠品となっています。
2. 三陸水産(有)は提携先が福島県いわき市にあり、工場に津波の被害がありました。また宮城県志津川市の製造元は

  甚大な被害を受け、しばらくは提携先と連絡が取れない状況になっていましたが、4月に入ってから再開のめどが

  立ったことが判明し、生活クラブとしてもそれに向けて確認作業を始める段階です。
3. それ以外にも生活クラブ連合会から入荷する消費材も、物流上に支障をきたして遅配や欠品となっているものも

  あります。また、今後は原材料や包材が滞るために欠品となるものもあります。

 生活クラブとしては、できるだけ欠品を避けるように対応をしていきます。当然、そこにはできる限り安全性を確保した

 上での供給を目指します。
 しかし本ニュースの最初の項にありますように、原発事故に対しては暫定的な運用をせざるを得ないという、非常事態とも

 呼べる状況にあります。
 だからこそ、この大変な事態を全国の生活クラブ組合員が一丸となって乗り切らなければならないと思います。
 
 

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